8月11日(金=祝)、ユマニテク教育研究所では新たな時代の教育をともに考え、実践するべく、第6回ユマニテク教育フォーラムを実施しました。県内の熱心な先生方に加えて、4年ぶりに県外からの先生方や教育関係者の方々にも参加していただき、いかにして生徒が主体的に探究学習に取り組んでいけるかをテーマに半日間の勉強会を行いました。参加者は例年と同じように50名ほどの人数でしたが、県外からの参加者は様々なフォーラム、研修会に参加されている目の肥えた方々が多く、ワークショップでの議論も深く中身の濃いものになり、とりわけ若手の先生方にとってはたいへん勉強になったのではないでしょうか。
以下に第1部から第3部まで、中身をかいつまんで振り返っておきます。
【第1部】 奥山 夢菜氏 実践発表と参加者ディスカッション
「地域との連携で生徒の探究学習を推進する」
(司会進行:三重県若手進路研究会 多賀秀徳)
奥山氏には午前中に行われた本学のオープンキャンパスにおけるパネルディスカッションから参加していただき、保育を目指す高校生や高校の先生方に多くの問題提起をしていただきました。午前午後と連続のご講演、ありがとうございました。
フォーラムにおいては、学習ナビゲーターや、起業家育成事業、社長業など幅広く若者と地域を結びつける活動を続ける奥山氏の経験を生かして、いかに中高生が主体的に地域と協働することで探究学習を推進していくか、それを先生方はいかに支援していくか、について会場の先生方に自らの実践事例を引きつつ、議論の場を醸成していただきました。
【第2部】 中西良文先生(三重大学教授)実践ワークショップ
「生徒の探究活動の報告書、論文、プレゼンを支援する」
(司会進行:ユマニテク教育研究所 鈴木達哉)
中西先生には昨年、生徒が主体的に学習する「自己調整学習」についてお話していただきました。。今年は、探究学習を論文、プレゼンにして発表していくために、先生方がいかに生徒を支援するか、についてのお話でした。「論文・プレゼンづくり」では「面白さ」が伝わるようにするのが大切であるという考え方を軸に、論文は客観的なスタイルで書く、その時のポイント、論文・プレゼンの一連の構成、などを、発表のパワーポイントを例にしながら学ぶことができました。生徒に支援するためだけでなく、先生方が自分で論文を書いたり、プレゼンをしたりするためにも勉強になるような、ためになる内容でした。また、実際にデータを用いて、「どのように書くべきか」を演習し、各校で論文やプレゼンをどのように実践しているか(あるいはできていないか)を議論・情報交換しながら、探究学習のアウトプットについてお互いの知見を深めることができました。
【第3部】 三重県若手進路研究会 実践発表 市川歩美(神戸高校)
「自分のことを振り返る時間」
第3部は三重県若手進路研究会のメンバーが、自分の実践・研究したことを発表する場になっています。今年は神戸高校の市川歩美教諭が「自分のことを振り返る時間」と題して、メンタルヘルスマネジメントについて発表しました。学校現場ではコロナ禍以後、小中学校の不登校者数が急激に増加しており、その原因の半数は「無気力・不安」を主たる要因としています。社会においても長期病欠の最大の原因がうつ病などの精神疾患であるというデータから3つのワークを通して自分や同僚の健康状態に関心を持ち、生産性向上に繋がる気づきを得ました。健康管理を経営的視点から考え、実践する「健康経営」の紹介や、メンタルヘルスケア推進のためのコミュニケーションに関するワーク、ワークエンゲイジメント尺度を使って、自分の没頭・熱意・活力を数値化するワーク等を行いました。先生方もシビアなテーマを聞く中にも「私、意外に熱意も活力もあるわ」などと楽しみながら取り組んでいました。
いつものように、最後にはリフレクションタイムを設け、自身を振り返るとともにアンケートを行いました。今回の最大の収穫はこのアンケートであったかもしれません。とりわけ、県外の目の肥えた参加者からは「そもそも探究とは何ぞや、との前提を共有するところから始めたほうが良いのでは?」「探究に関してまだまだ壁を感じている先生が多いことが分かって自分の今後の方向性を見出すことができた」など深い提言をいただいたり、「3本が地域(奥山)×学問(中西)×自分(市川)という構成がなるほどと思った」「教員の知らなかったことが適確にテーマ付けされていて研修会のテーマ選択の参考になった」など運営に関することまで指摘していただいたものもありました。さらには「全国で活躍されている方々がこれだけそろっているので、三重県の若手にももっと参加してほしかった。県教委の立場からも何か援護射撃ができないか、考えてみたい」など応援のメッセージもいただきました。参考になるとともに大いに勇気もいただきました。研究所では、来年に向けてさらにいいものを作っていきたいと思います。ありがとうございました。
追記
ユマニテク教育研究所では、次回、12月2日(土)に地域教育連携フォーラムを昨年に引き続き行います。今年も本研究所顧問 鈴木建生(ユマニテク短大学長)を講師として「授業デザイン」をテーマとしたワークショップを行います。10月にはユマニテク短大HP上に案内を掲載しますので、ぜひともご参加ください。